「ドラゴン危機一発」

 ブルース・リーの長編劇映画主演第一作。

「ドラゴン/ブルース・リー物語」を観ると良く分かるけど、ハリウッドで上手く行かなかっ たリーが香港へ帰ってコレに出たところ爆発的な人気になった。
 彼の人生における最初の成功と言える作品。

 日本では世界中で大ヒットしたアメリカ映画「燃えよドラゴン」の洗礼の後、本作は香港か ら輸入されて公開された。それまで日本には香港映画なぞはただの一本も入って来ていなかっ た。
 ブルース・リーは映画によって国境を越えた文化の交流を果たしたと言える。

 しかし「燃えよドラゴン」がセンセーショナルを巻き起こし、初めて日本人がリーの存在に 驚嘆した時点で既にリーはこの世にいなかったと言う皮肉!

 彼はその世界的な成功を知らずに死んでしまった。でも初めて香港で主演したこの作品の成 功は知っており、ここにリーの人生におけるひとつの到達点があったのではないか。

 古い映画だけれど、そんな目で見てみると、まだスターと言うには程遠かったリーの演技に 何か違ったモノを発見出来るのではないかな。

 ただコレ初公開時には例の「アチョー」と言う怪鳥音は本当は無かった。
 リーが「アチョー」と言い出したのは次作の「怒りの鉄拳」からであり、今回放映されるの も恐らく怪鳥音入りバージョンだと思うけど、コレは他の作品でリーが発している怪鳥音から 取って来て、リーのアクションに合わせて後付けしたモノですね。
 それにしちゃ良く合わせてあるなぁと思いましたけど。

 そしてリーの映画と言えば何より彼自身による身のこなしや技が最大の見所なのだけれど、 本作ではまだデビュー作と言うこともあってか、半分以上は監督によるセンスで見せる演出が 活きていますね。
 アクションの描写やカット割りにしても、クンフー物と言うよりは当時多大な影響を与えて いたと言われる座頭市や高倉健さんの殴り込みモノ的なテイストを醸し出しています。

 最初のうちリーは「もう喧嘩はしない」という誓いを立てている為に悪キャラに何をされて も我慢に我慢を重ね、なかなかアクションを見せない。
 こ〜の観客を焦らしに焦らして、ついに堪忍袋の緒が切れたリーが爆発的に蹴る! 蹴る!  蹴るという持って行き方も健さんテイスト。
 乱闘描写にもノコギリをブン投げたり、ナイフを刺して血しぶきを上げたりと、健さんっぽ く荒っぽい描写が目立っています。

 また相手の人間の上をカット割りで一足飛びに超えてしまったり、殴って壁に打ち付けられ た人間の形に壁がくり抜かれたりするのが楽しいですよ。

 そして最後に対決する悪の最強キャラ? が一見普通にオジサンと言うのが香港映画独特で したよねぇ。
 ジャッキー・チェンの「酔拳」に始まるシリーズの師匠もジイサンでしたよねぇ。それなの にあの動きには目を見張りました。
 本作の最強オヤジも髭生やしてメガネして、最初にテレビ放映した時は解説の淀川長治が「 あの悪役、三木のり平みたいですね」って言ってたの覚えてます。

 ともあれ何よりもリーの動きの凄さが全てを突出していてやっぱり凄かったですよね。



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